【相続手続⑲】相続の相談は誰にすればいい? 専門家ごとの役割を分かりやすく解説

はじめに

親が亡くなったあと、相続の手続きを進めようとして、こう思ったことはありませんか。
「これって、誰に相談すればいいの?」
役所のホームページを見ても、専門用語が多くて分かりにくい。知り合いに聞いても、「うちは弁護士に頼んだよ」「うちは自分たちで手続きしたよ」と、バラバラの答えが返ってくる。
実は、相続の相談先は一つではありません。
何に困っているかによって、相談する専門家が変わります。
この記事では、行政書士・司法書士・税理士・弁護士が、それぞれ何をしてくれるのかを分かりやすく整理します。 読み終わるころには、「うちの場合は、まずこの専門家に相談すればよさそうだ」と判断しやすくなります。

結論:相続の相談先は「困りごと」で決まる

先に結論をお伝えすると、相続の主な相談先は次のとおりです。

  • 相続人の調査や遺産分割協議書など、書類の作成・整理を依頼したい
    → 行政書士
  • 土地や建物の相続登記を依頼したい
    → 司法書士
  • 相続税がかかるか確認したい、相続税の申告を依頼したい
    → 税理士
  • 相続人同士で対立している、交渉を任せたい
    → 弁護士

資格の名前をすべて覚える必要はありません。
まずは、「自分が何に困っているのか」を整理することが大切です。
なお、実際の相続では、複数の専門家が必要になることもあります。
たとえば、遺産分割協議書の作成は行政書士、相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士というように、連携して手続きを進める場合があります。

なぜ専門家が分かれているの?

「相続の専門家」とひとまとめにされることがありますが、それぞれの専門家には、法律によって認められている業務の範囲があります。
たとえば病院では、「内科」「外科」「歯科」などに診療科が分かれています。いずれも体に関する専門家ですが、診察や治療を担当する範囲は異なります。
相続の専門家も、これと似ています。 書類作成、登記、税金、相続人間の紛争など、困りごとの内容によって、適切な相談先が変わるのです。

それぞれの専門家は何をしてくれる?

相続の困りごと別に、書類作成は行政書士、不動産の名義変更は司法書士、相続税は税理士、相続人間の対立は弁護士が相談先になることを示す図

行政書士

行政書士は、相続手続きに必要な書類の作成や、その前提となる調査・整理を担当します。
たとえば、次のような業務があります。

  • 戸籍を収集して相続人を調査する
  • 相続関係説明図を作成する
  • 相続財産の資料を整理する
  • 相続人全員の合意内容に基づいて遺産分割協議書を作成する
  • 金融機関の相続手続きを支援する

「必要な書類が多く、何から始めればよいか分からない」「まず相続人や財産の全体像を整理したい」という場合の相談先の一つです。
ただし、行政書士は、相続人同士の交渉を代理したり、相続登記や相続税申告を代理したりすることはできません。
紛争・登記・税務が関係する場合は、弁護士・司法書士・税理士との連携が必要です。

司法書士

司法書士は、不動産登記の専門家です。
土地や建物を相続した場合、登記上の名義を亡くなった人から相続人へ変更する「相続登記」が必要になります。司法書士には、その申請手続きを依頼できます。
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。
原則として、不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
正当な理由なく申請を怠った場合は、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
なお、相続登記は相続人本人が申請することもできます。司法書士への依頼が法律上必須というわけではありませんが、戸籍が多い、不動産が複数ある、相続関係が複雑といった場合には、相談すると安心です。

参考:法務省 

参考:法務局

税理士

税理士は、相続税など税金の専門家です。
主に次のようなことを依頼できます。

  • 相続税がかかるかどうかの確認
  • 土地や株式などの財産評価
  • 相続税の計算
  • 相続税申告書の作成・提出

相続税は、すべての相続でかかるわけではありません。
原則として、正味の遺産額が次の基礎控除額を超える場合に、申告が必要になります。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
ただし、財産の評価や特例の適用には専門的な判断が必要です。
「基礎控除を超えそう」「不動産や非上場株式がある」「申告が必要か判断できない」という場合は、早めに税理士へ相談しましょう。
相続税の申告期限は、原則として、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

参考:国税庁

参考:国税庁

弁護士

弁護士は、相続人同士の対立や法的な紛争に対応する専門家です。
たとえば、次のような場合に相談します。

  • 遺産の分け方について相続人同士で意見が対立している
  • 他の相続人が話し合いに応じない
  • 特定の相続人との交渉を任せたい
  • 遺産分割調停や審判への対応が必要
  • 遺言書の有効性や遺留分をめぐって争いがある

相続人の代わりに、他の相続人と交渉したり、家庭裁判所の手続きに対応したりできることが、ほかの専門家との大きな違いです。
なお、「相続人の住所が分からない」「連絡先が分からない」という段階であれば、戸籍や戸籍の附票などによる調査で解決できることもあります。
一方、相手が話し合いを拒んでいる、連絡しても返事がない、すでに意見が対立しているといった場合は、弁護士への相談を検討しましょう。

参考:日本弁護士連合会

よくある勘違い

相続のことは弁護士に頼めば、すべて解決する?

相続人同士で対立している場合は、弁護士が重要な相談先になります。
一方、相続人同士で合意できており、必要なのが戸籍収集、書類作成、相続登記、相続税申告などであれば、それぞれ行政書士・司法書士・税理士に相談する方法もあります。
「相続だから必ず弁護士」というわけではなく、紛争や交渉が必要かどうかが、一つの判断基準になります。

家族の仲がよければ、何もしなくても大丈夫?

家族の仲がよくても、必要な相続手続きがなくなるわけではありません。
特に、不動産がある場合は相続登記、相続税の申告が必要な場合は税務署への申告など、それぞれ期限があります。
また、借金などがあり相続放棄を検討する場合は、原則として、自分のために相続が始まったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。

参考:裁判所

相続税は、税務署から連絡が来てから考えればいい?

税務署から必ず事前に案内が届くとは限りません。
相続税の申告が必要かどうかは、相続人側で財産や債務を確認して判断する必要があります。
まずは、不動産・預貯金・有価証券・保険・借入金などを整理し、財産の全体像を把握することが大切です。

行政書士・司法書士・税理士・弁護士について、相続で相談する場面と具体的な仕事内容を比較した表

実務上のポイント

現在の困りごとから、相続人・財産・書類の整理は行政書士、不動産がある場合は司法書士、相続税がかかりそうな場合は税理士、相続人間の対立や交渉は弁護士へ相談する流れを示す図

相続手続きで困りやすいのは、「誰に相談すればよいか分からないまま、時間が過ぎてしまうこと」です。
最初に確認したいのは、主に次の点です。

  • 遺言書があるか
  • 相続人は誰か
  • どのような財産や債務があるか
  • 不動産があるか
  • 相続税がかかりそうか
  • 相続人同士で意見の対立があるか

相続人や財産、必要書類などの全体像を整理したい場合は、行政書士が相談窓口の一つになります。
そのうえで、相続登記が必要なら司法書士、相続税の申告が必要なら税理士、相続人間の交渉が必要なら弁護士につなぐことができます。
ただし、借金が見つかり相続放棄を検討している場合や、すでに相続人同士で対立している場合などは、最初から弁護士へ相談した方がよいこともあります。
大切なのは、資格名だけで相談先を決めるのではなく、現在の困りごとと期限を整理して、適切な専門家につなげてもらうことです。

まとめ

  • 相続の相談先は、困りごとの内容によって変わる
  • 書類の作成・整理は行政書士、不動産登記は司法書士、相続税は税理士、紛争や交渉は弁護士が主な相談先
  • 一つの相続で複数の専門家が必要になることもある
  • 相続人や財産の全体像を整理したい場合は、行政書士も相談窓口の一つになる
  • 相続登記、相続税申告、相続放棄などには期限があるため、早めの確認が大切

「誰に相談すればよいか分からない」という場合も、まずは現在の状況を話し、必要な手続きを整理してもらうことから始めてみましょう。

相続関係の書類を種類ごとに整理し終え、明るいリビングで安心した表情でお茶を飲む女性

相続手続きは、何から始めればよいか迷いやすいものです。
戸籍集めや財産確認、今後の進め方で不安があるときは、ひとりで抱え込まず、お気軽にご相談ください。
状況をお聞きしながら、必要な手続きや進め方を一緒に整理いたします。

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