【相続手続⑮】遺産分割協議書はなぜ必要?

はじめに
「相続人みんなで話し合って、財産の分け方は決まった。じゃあ、これで手続きは終わり?」
いいえ、話し合いがまとまっただけでは、その内容を銀行や法務局に伝えることができません。
誰がどの財産を相続するのかを、銀行や法務局などの第三者に確認してもらうためには、話し合った内容を「書類」にしておく必要があります。
この記事では、遺産分割協議書がなぜ必要なのか、どのような場面で使われるのかを分かりやすく説明します。
結論:話し合いの内容を証明するために必要
前回お話しした遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合うことです。
その話し合いで決まった内容を文章にまとめたものが、「遺産分割協議書」です。
たとえば、次のような内容を記載します。
- 実家の土地と建物は、長男が相続する
- 銀行の預金は、長女が相続する
- その他の財産は、相続人全員で決めた割合に従って分ける
銀行や法務局は、相続人同士の話し合いに立ち会っているわけではありません。
そのため、「相続人全員が、この分け方に合意している」ということを、書類によって確認する必要があるのです。
公的機関の参考情報
相続登記で使用する遺産分割協議書については、法務省の案内で、相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添付する方法が示されています。
▶ 法務省「登記申請手続のご案内(相続登記・遺産分割協議編)」
遺産分割協議書を使うまでの流れ

どんな場面で使うの?遺産分割協議書は、主に次のような手続きで使用します。
① 預金の解約・払い戻し
亡くなった方名義の預金を解約したり、払い戻しを受けたりする際に、遺産分割協議書の提出を求められることがあります。
ただし、必要書類や手続きの方法は金融機関によって異なります。
遺産分割協議書を提出する方法のほか、金融機関所定の相続届などに相続人全員が署名・押印する方法が用意されていることもあります。
そのため、手続きを始める前に、利用する金融機関へ必要書類を確認しましょう。
② 不動産の名義変更(相続登記)
遺産分割協議によって、実家などの不動産を相続する人を決めた場合は、相続登記の申請に遺産分割協議書を使用します。
この場合は、遺産分割協議に参加した相続人全員の実印を押し、それぞれの印鑑証明書を添付するのが原則です。
相続登記の必要書類については、法務局の案内でも確認できます。
▶ 法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」
③ 証券口座や自動車などの相続手続き
証券口座、自動車、その他の財産についても、名義変更などの際に遺産分割協議書の提出を求められることがあります。
必要書類は財産の種類や手続きを行う機関によって異なるため、それぞれの窓口に確認する必要があります。
つまり、遺産分割協議書は「話し合いの記録」であると同時に、「次の手続きに進むための鍵」のような役割を果たしているのです。
④ 遺産分割協議書が必要ない場合もある
遺産分割協議書は、すべての相続で必ず作成するものではありません。
たとえば、次のような場合には、遺産分割協議書を作成しないことがあります。
- 相続人が一人しかいない
- 有効な遺言書に従って手続きをする
- 法定相続分のまま相続登記をする
- 金融機関所定の書類によって預金の手続きをする
- 受取人が指定されている生命保険金を請求する
「相続手続には必ず遺産分割協議書が必要」というわけではありません。
遺産分割協議によって財産の分け方を決め、その内容に従って手続きをする場合に、必要となる書類だと考えると分かりやすいでしょう。
よくある勘違い
「口頭で決めたから大丈夫」
家族全員が納得していても、口頭で決めただけでは、銀行や法務局などが合意内容を確認できません。また、時間がたつと、話し合った内容について記憶や認識が食い違うこともあります。
決まった内容は、できるだけ書面に残しておきましょう。
「代表者一人が署名すればいい」
遺産分割協議は、原則として相続人全員の合意によって成立します。
そのため、遺産分割協議書を相続登記などに使用する場合は、協議に参加した相続人全員が実印を押し、それぞれの印鑑証明書を添付します。
一人でも協議から外れていると、その遺産分割協議は原則として有効に成立しません。
遠方に住んでいる相続人や、疎遠になっている相続人がいる場合は、全員の合意と必要書類をそろえるまでに時間がかかることがあります。
まずは、誰が相続人になるのかを正確に確認することが大切です。
手続きごとの必要性

実務上のポイント
遺産分割協議書には、法律で統一された決まった書式があるわけではありません。
ただし、少なくとも次の内容を正確に記載する必要があります。
- 亡くなった方を特定する情報
- 誰がどの財産を相続するのか
- 相続人全員が合意したこと
- 相続人全員の住所・氏名
- 協議が成立した日
- 相続人全員の押印
不動産については、登記事項証明書の記載に合わせて所在・地番・家屋番号などを正確に記載する必要があります。
預金についても、金融機関名・支店名・口座の種類・口座番号などによって対象を特定します。
記載が不正確だと、銀行や法務局で修正を求められ、手続きが止まってしまうことがあります。
財産の種類が多い場合や、分け方が複雑な場合は、専門家に確認しながら作成すると安心です。
まとめ
- 遺産分割協議書は、相続人全員で決めた財産の分け方を書面にしたもの
- 相続人全員が合意した内容を、銀行や法務局などに示す役割がある
- 預金や不動産などの相続手続きで使用する
- 相続登記に使用する場合は、相続人全員の実印と印鑑証明書が原則として必要
- すべての相続で必ず作成するものではない
- 必要書類は、手続きを行う金融機関や窓口に事前に確認する
遺産分割協議書は、家族での話し合いを、実際の名義変更や払い戻しにつなげる大切な書類です。
次は、実家などの不動産を相続した場合、名義変更(相続登記)をいつまでにしなければならないのかを見ていきましょう。

相続手続きは、何から始めればよいか迷いやすいものです。
戸籍集めや財産確認、今後の進め方で不安があるときは、ひとりで抱え込まず、お気軽にご相談ください。
状況をお聞きしながら、必要な手続きや進め方を一緒に整理いたします。



