【終活と認知症対策③】父がお金の計算を間違えるようになった――家族が財産管理を考え始める目安

「あれ?」と感じたら、お金まわりの変化にも目を向けて
「レジで小銭を出すのに時間がかかるようになった」
「同じ物を何度も買ってくる」
「通帳の残高が合わないと言って不安がる」
久しぶりに実家へ帰って、お父さんのお金まわりの様子に「あれ?」と感じたことはありませんか。
前回は、同じ話を繰り返すのが「年齢による物忘れ」なのか「認知症のサイン」なのかを見てきました。
今回は、その中でも「お金の計算や管理」に絞って、家族が動き始める目安をお伝えします。
結論:「間違いが繰り返される」なら、家族で話し始めるとき
目安は、以前はできていたお金の計算や管理の間違いが、何度か続くようになったときです。
たまのうっかりなら心配しすぎなくて大丈夫です。
ただ、お父さんが元気に判断できるうちにしか選べない備えがあります。
「様子見のまま何年も過ぎる」のが、いちばんもったいないのです。
なぜ早めに考えたほうがいいの?
理由は二つあります。
一つ目は、お金の管理が、暮らしの中でも特に頭を使う作業だからです。
計算、支払いの期日、複数の口座の管理など、いくつものことを同時に考えなければなりません。
二つ目は、判断する力が弱くなると、契約などの手続きが難しくなるからです。
本人が理解して意思を示せるうちなら、「自分に何かあったら、この人に任せたい」と自分で決めておけます。
判断が難しくなってからだと、選べる方法が限られてきます。

具体的にはどんな様子?
次のような様子が見られたら、話し合いを始めるサインです。

なかでも注意したいのは、いちばん下の項目です。
判断する力が低下すると、本人だけでは消費者トラブルに気づきにくいこともあります。
消費者庁では、認知症と消費者トラブルに関する情報や、家族など周囲の人が見守る際のポイントを紹介しています。
▶ 参考:消費者庁「高齢者の認知機能障害に応じた消費者トラブルと対応策の検討に関する研究」
よくある勘違い
「計算を間違える=認知症」とは限りません。
疲れや体調など、別の原因で一時的に間違えることもあります。
決めつけず、気になる変化が続く場合は、医療機関や地域の相談窓口へ相談しましょう。
厚生労働省では、「もしかして認知症では」と思われる症状に気づいたときの相談先として、地域包括支援センターなどを案内しています。
「家族だから、通帳からお金を下ろせる」わけではありません。
口座は本人のものです。
家族であっても、本人に代わって自由に引き出せるとは限りません。
事情を知らない親族から「勝手に使った」と疑われ、きょうだい間のトラブルになることもあります。
家族が代わりに銀行手続きをするときには、どんな点に注意すればよいのでしょうか。
この点は次回、詳しく見ていきます。
「もう少し様子を見よう」で時間が過ぎてしまうこともあります。
判断が難しくなってからでは、預金の手続きや実家の売却などについて、本人の意思だけで進めることが難しくなる場合があります。
実務上のポイント
最初の一歩は、難しいことではありません。
最初の一歩
- 相談先を知る:お住まいの地域の「地域包括支援センター」に相談できます。
- かかりつけ医に伝える:受診の際に、気になっている変化を伝えてみましょう。
- 大切な物の場所を確認する:通帳、印鑑、保険証券、年金の書類などです。本人と一緒に見ながら整理するのがコツです。
- きょうだいで情報を共有する:後々の誤解を防ぐことにつながります。
- 伝え方に気をつける:「管理させて」ではなく、「万が一のときに困らないよう、一緒に整理しておこう」と話すとよいでしょう。
まとめ
- お金の計算ミスが繰り返されたら、家族で話し始める一つの目安です。
- 元気で判断できるうちなら、本人の希望で備えを選べます。
- 「認知症だ」と決めつけず、気になる変化が続く場合は相談や受診につなげましょう。
- 最初にできることは、相談先を確認し、大切な書類などの場所を本人と一緒に整理することです。
お金の管理が難しくなってくると、次に困るのが銀行の手続きです。
次回は、「89歳の父が銀行へ行けなくなった――子どもが代わりに手続きできる?」について見ていきます。

終活や認知症への備えは、「まだ元気だから大丈夫」と思っているうちは、なかなか考えるきっかけがないものです。
しかし、財産の整理や管理、遺言、相続の準備など、本人が自分で判断できるうちだからこそ、できることがあります。
「何から始めればよいのか分からない」
「親の財産や相続について、今のうちに整理しておきたい」
というときは、お気軽にご相談ください。
行政書士・相続診断士として、お話を伺いながら状況を整理し、これから必要となる準備や手続きを一緒に考えていきます。


