【遺言⑧】遺言書は何度でも書き直せる?

はじめに
「遺言って、一度書いたら、もう変更できないんですよね?」
このように思っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、家族関係や財産の状況、ご自身の気持ちは、時間が経つにつれて変わっていくものです。
書いたときには「これで大丈夫」と思っていても、後になって「やっぱり内容を変えたい」と思うことは、決して珍しくありません。
この記事では、遺言を書き直したくなったときに何ができるのか、書き直す際にどのような点に注意すればよいのかを、分かりやすくお伝えします。
結論:遺言は何度でも書き直せる
結論からお伝えすると、遺言は何度でも書き直すことができます。
遺言者は、遺言の方式に従って、遺言の全部または一部をいつでも撤回できます。
内容の一部を変更することも、以前の遺言をすべて撤回することも可能です。変更や撤回について、相続人などの同意を得る必要もありません。
「一度書いたら内容が固定されてしまう」というイメージをお持ちの方もいますが、遺言は、遺言者本人の最終的な意思を尊重する仕組みになっています。
なぜ、何度でも書き直せるの?
遺言は、「自分が亡くなった後、財産などをどのようにしてほしいか」という本人の意思を残すものです。
人の気持ちや家族関係、財産の内容は変わっていきます。
数年前に作った遺言の内容が現在の意思と違っているのに、以前の内容だけで相続手続きが進んでしまっては、本人の最終的な意思を実現できません。
そのため、遺言は、いつでも変更・撤回できることになっています。
後から作った遺言が、前の遺言と食い違っている場合は、食い違っている部分について、前の遺言を撤回したものとみなされます。
つまり、常に古い遺言の全部が無効になるわけではありません。
内容が食い違っていない部分は、以前の遺言が残る場合があります。
どうやって書き直すの?

書き直し方には、いくつかの方法があります。
① 一部だけ変更する場合
変更したい部分について、新しい遺言を作成する方法があります。
ただし、新旧の遺言が複数残ると、どの部分が変更され、どの部分が残っているのかが分かりにくくなることがあります。
そのため、実務上は、変更後の内容をすべて盛り込んだ新しい遺言を作り直し、「以前に作成した遺言をすべて撤回する」と明記する方法が、分かりやすく安心です。
② 全部を撤回する場合
以前の遺言をすべて撤回したい場合は、新しい遺言の中に、「これまでに作成した遺言をすべて撤回する」という趣旨を記載します。
ただし、撤回するために作る文書も、法律で定められた遺言の方式を守って作成する必要があります。
③ 遺言書を破棄する場合
遺言者本人が、撤回する意思で自筆証書遺言を故意に破棄した場合、その破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされることがあります。
ただし、遺言書を破棄するだけでは、後から撤回の意思や範囲を確認しにくくなる可能性があります。
確実に内容を見直したい場合は、破棄だけで済ませず、新しい遺言を適切な方式で作成する方が安心です。
よくある勘違い
公正証書遺言は変更できない?
公正証書遺言であっても、変更や撤回は可能です。
新しい遺言を適切な方式で作成すれば、以前の公正証書遺言と食い違う部分については、新しい遺言が優先されます。
後から作る遺言は、必ずしも公正証書遺言でなければならないわけではありません。
ただし、自筆証書遺言には、日付や署名などの厳格な要件があります。形式の不備によって新しい遺言が無効になれば、変更したつもりの内容が認められない可能性もあります。
重要な内容を変更する場合は、改めて公正証書遺言を作成することも検討しましょう。
古い遺言を公証役場で取り消してもらう必要がある?
新しい遺言を作るために、古い公正証書遺言を公証役場で取り消してもらう必要はありません。
ただし、公証役場には公正証書遺言の原本が保存されるため、手元の謄本を処分しただけでは、遺言を撤回したことにはなりません。
新しい遺言の中で、以前の遺言を撤回することを明確にしておくと安心です。
法務局に保管している遺言を書き直す場合
法務局に保管されている自筆証書遺言は、内容を書き加えたり、書き換えたりすることができません。
内容を変更したい場合は、一般的には次のように進めます。
- 法務局で保管申請の撤回をする
- 保管されていた遺言書の返還を受ける
- 新しい遺言書を作成する
- 必要に応じて、新しい遺言書を改めて法務局へ保管申請する
ここで注意したいのは、法務局に対する「保管申請の撤回」と、遺言そのものの「撤回」は別であるという点です。
保管申請を撤回して遺言書を返してもらっただけで、その遺言の効力が当然になくなるわけではありません。
反対に、新しい遺言を作成しても、以前の遺言書が法務局から自動的に取り除かれるわけではありません。
混乱を避けるためにも、法務局で保管している遺言を書き直す場合は、以前の遺言の扱いも含めて整理しておきましょう。
書き直すときの注意点
書き直す際は、次の点に注意しましょう。
- 新しい遺言にも、法律で定められた方式を守る
- 作成した年月日を正確に記載する
- どの遺言を、どの範囲で撤回するのかを明確にする
- 財産や受取人の記載に矛盾がないか確認する
- 複数の遺言が残る場合は、家族が混乱しないように整理する
特に自筆証書遺言では、日付を「令和○年○月吉日」のように書くと、作成日を特定できず、遺言が無効になる可能性があります。
変更箇所が多い場合や、不動産・事業・複雑な家族関係がある場合は、専門家へ相談することも検討しましょう。
まとめ
遺言は、一度書いたら終わりではありません。
気持ちや家族関係、財産の状況が変われば、何度でも書き直すことができます。
後から作った遺言が以前の遺言と食い違う場合は、食い違っている部分について、新しい遺言が優先されます。
ただし、新しい遺言に形式上の不備があると、変更したつもりの内容が認められない可能性があります。
「今の遺言を少し見直したい」と思ったときは、まず現在の遺言の内容と保管場所を確認し、どこを変更したいのか整理することから始めてみましょう。

遺言は、将来の安心につながる大切な準備です。
「まだ早いかな」「何を書けばよいのだろう」と迷われる方も少なくありません。
遺言について不安や疑問があるときは、ひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。
お話を伺いながら、ご希望に合った進め方を一緒に整理いたします。



