【遺言⑥】遺言書を見つけたら開けていい?

はじめに
親が亡くなったあと、部屋を片付けていたら、引き出しの奥や仏壇の中から「遺言書」と書かれた封筒が出てきた。
そんなとき、多くの方が最初に思うのは、
「今すぐ開けて、中身を確認したい」
ということではないでしょうか。
しかし、ここで少し立ち止まってください。
見つけた遺言書が封印されている場合、家庭裁判所以外の場所で勝手に開封してはいけません。
また、封印されていない遺言書であっても、原則として家庭裁判所の「検認」が必要です。
この記事では、遺言書を見つけたときに最初にすべきことと、うっかり開けてしまった場合の対応を分かりやすく説明します。
結論:封印された遺言書は、その場で開けない
自宅などで「遺言書」と書かれた封筒を見つけたら、まずはその場で開けず、見つけたときの状態のまま保管してください。
法律上、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いのもとで開封することになっています。また、自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、封印の有無にかかわらず、原則として家庭裁判所の「検認」を受けなければなりません。
ただし、次の遺言書は検認が不要です。
- 公正証書遺言
- 法務局の遺言書保管所に保管されていた自筆証書遺言
種類が分からない場合は、自己判断で開封せず、家庭裁判所や専門家に確認するのが安全です。
なぜ、すぐに開けてはいけないの?
遺言書には、亡くなった方の最後の意思が記されています。
もし、見つけた人が先に開封したり、書類に手を加えたりすると、ほかの相続人から、
- 中身を書き換えたのではないか
- 一部を抜き取ったのではないか
- 本当に見つけたときのままなのか
と疑われ、相続人同士のトラブルにつながる可能性があります。
そこで、家庭裁判所が遺言書の形状、日付、署名、加除訂正の状態などを確認し、その時点での状態を記録する手続きが設けられています。
これが「検認」です。
なお、検認は遺言書が法的に有効か無効かを判断する手続きではありません。
あくまで遺言書の存在と内容を相続人に知らせ、現在の状態を明確にして、後日の偽造や変造を防ぐための手続きです。
▶裁判所「遺言書の検認」
検認ってどんな手続き?

検認の申立てができるのは、遺言書を保管していた人、または遺言書を発見した相続人です。
申立先は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
一般的には、次のような流れで進みます。
検認手続きの流れ
1.遺言書を見つけた状態のまま保管する
2.必要な戸籍などを集める
3.家庭裁判所に検認を申し立てる
4.家庭裁判所から相続人へ検認期日の通知が届く
5.検認期日に遺言書を提出し、封印がある場合は家庭裁判所で開封する
6.検認後、必要に応じて検認済証明書を申請する
相続人全員に検認期日が通知されますが、全員が出席しなければ検認できないわけではありません。
また、「家庭裁判所」と聞くと、裁判や争いごとのように感じるかもしれません。
しかし、検認は相続人同士の争いを解決したり、遺言書の有効・無効を決めたりする手続きではありません。
なお、公正証書遺言や法務局で保管されていた自筆証書遺言には、検認が必要ありません。
▶法務省の「自筆証書遺言書保管制度について」
この違いについては、次回の記事で詳しく説明します。
開けたら遺言書は無効になる?
「うっかり開けてしまったら、遺言書が無効になるのでは?」
と心配される方もいるでしょう。
しかし、封印された遺言書を家庭裁判所以外で開封したからといって、それだけで遺言書が無効になるわけではありません。
ただし、家庭裁判所以外で封印のある遺言書を開封した場合や、検認の手続きをしなかった場合には、法律上、5万円以下の過料に処される可能性があります。
開封してしまった場合でも、遺言書を捨てたり、書き込んだり、再び封をして元の状態に見せかけたりしてはいけません。
発見したときや開封したときの状況を記録し、遺言書をそのまま保管したうえで、早めに家庭裁判所や専門家へ相談してください。
見つけたら、まず何をする?
遺言書を見つけたときは、次の点を意識してください。
- 封印されている場合は、その場で開けない
- 封筒や遺言書に書き込まない
- 見つけた場所や日時、発見時の状態を記録する
- 遺言書を紛失しないよう安全に保管する
- ほかの相続人にも、遺言書が見つかったことを伝える
- 遺言書の種類が分からなければ、家庭裁判所や専門家に確認する
外見だけでは、自筆証書遺言なのか、別の書類なのか判断しにくいこともあります。
また、「法務局に遺言書を預けた」という通知や保管証などが見つかった場合は、自宅に遺言書の原本がなくても、法務局の遺言書保管制度が利用されている可能性があります。
迷ったときは無理に自己判断せず、開封する前に確認するのが安全です。

まとめ
- 封印のある遺言書は、家庭裁判所以外で開封してはいけない
- 自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、封印がなくても原則として検認が必要
- 検認は遺言書の有効・無効を判断する手続きではない
- 公正証書遺言と法務局で保管されていた自筆証書遺言は、検認不要
- うっかり開封しても、それだけで遺言書が無効になるわけではない
- 開封してしまった場合は、手を加えず、そのまま保管して相談する
遺言書を見つけたら、まず覚えておきたいのは「開けず、書き込まず、そのまま保管する」ということです。
次に何をすればよいか分からないときは、一人で判断せず、家庭裁判所や専門家に相談してください。

遺言は、将来の安心につながる大切な準備です。
「まだ早いかな」「何を書けばよいのだろう」と迷われる方も少なくありません。
遺言について不安や疑問があるときは、ひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。 お話を伺いながら、ご希望に合った進め方を一緒に整理いたします。



