【遺言④】自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

はじめに
前回の記事では、「遺言があれば、誰に何を渡すかについて、自分の意思を残すことができる」というお話をしました。
では、実際に遺言書を作ろうと思ったとき、どのような方法を選べばよいのでしょうか。
調べてみると、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」という言葉が出てきます。
「何が違うの?」
「自分の場合は、どちらを選べばいいの?」
ここで迷ってしまう方も少なくありません。
この記事では、自筆証書遺言と公正証書遺言の主な違いと、それぞれがどのような方に向いているのかを分かりやすくご紹介します。
結論:どちらも正式な遺言だが、作り方が大きく違う
先に結論をお伝えすると、法律で定められた要件を満たしていれば、どちらも有効な遺言になります。
- 自筆証書遺言:原則として自分で本文を手書きして作る遺言
- 公正証書遺言:公証人が遺言者の意思を確認し、公正証書として作成する遺言
自筆証書遺言は、自分で作成できるため、費用を抑えやすく、比較的手軽です。
一方、公正証書遺言は、作成に費用や準備が必要ですが、方式の不備によって無効になるリスクを抑えられ、原本も公証人によって保管されます。
「手軽さを重視するのか」「将来の確実性を重視するのか」が、選ぶ際の一つの基準になります。
なぜ2つの方法があるの?
遺言書は、書いた本人が亡くなったあとに効力を生じる書類です。
そのため、実際に使われるときには、本人に「これは本当にあなたの意思ですか」と確認することができません。
自筆証書遺言は、自分だけで作れる反面、法律で定められた書き方を守る必要があります。
また、自宅などで保管していた場合には、原則として、相続開始後に家庭裁判所で「検認」という手続を受けなければなりません。
ただし、検認は遺言書の有効・無効を判断する手続ではありません。
遺言書の状態や内容を確認し、その後の偽造や変造を防ぐための手続です。
なお、自筆証書遺言を法務局の「自筆証書遺言書保管制度」で保管してもらった場合、家庭裁判所の検認は不要です。
公正証書遺言は、作成時に公証人が本人確認と意思確認を行い、法律で定められた方式に従って作成します。そのため、作成後の方式上のトラブルを抑えやすいのが特徴です。

よくある勘違い
「自筆証書遺言は、自分で書くだけだから簡単」と思われがちですが、書き方には法律上のルールがあります。
遺言書の本文、作成日、氏名は、原則として本人が自書し、押印しなければなりません。
日付が特定できない、署名や押印がないなど、方式に不備があると、遺言書が無効になる可能性があります。
なお、財産目録については、パソコンで作成したものや通帳のコピーなどを添付することもできます。
ただし、その場合も、目録の各ページに署名と押印が必要です。
一方、「公正証書遺言は大変そう」と思う方もいますが、公証人が作成に関わるため、方式の不備によって無効になるリスクを大きく抑えられます。
ただし、公正証書遺言であれば、相続に関する問題が絶対に起こらないというわけではありません。
遺留分への配慮や、財産の内容・家族関係に応じた検討は別に必要です。
実務上のポイント
自筆証書遺言は、内容が比較的シンプルで、自分で適切に作成・管理できる方に向いています。
ただし、自筆証書遺言を選ぶ場合でも、紛失や発見されないリスクを減らしたい方は、法務局の保管制度を利用する方法があります。
法務局で保管された遺言書は、相続開始後の検認も不要です。
一方、次のような場合は、公正証書遺言を検討する意味が大きくなります。
- 相続人同士の関係が複雑である
- 不動産や複数の財産がある
- 法定相続分とは異なる分け方を希望している
- 相続人以外の人や団体に財産を渡したい
- 遺言書の紛失や方式上の不備をできるだけ避けたい
- 高齢や病気などにより、将来の意思能力について心配がある
迷った場合は、まず「誰に、どの財産を渡したいか」をメモや原案として整理し、そのうえで、自筆証書遺言にするか、公正証書遺言にするかを検討するとよいでしょう。
まとめ
- 自筆証書遺言は手軽に作れるが、書き方や保管方法に注意が必要
- 法務局で保管された自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認が不要
- 公正証書遺言は費用や準備が必要だが、方式上の確実性が高い
- 財産額だけで決めず、家族関係や財産の内容も踏まえて選ぶことが大切
どちらを選ぶ場合でも、大切なのは、遺言書を作ること自体ではなく、自分の意思が亡くなったあとに正しく実現されるように準備しておくことです。
次回は、自筆証書遺言を選んだ場合に、必ず押さえておきたい書き方の注意点について、具体的にご紹介します。

遺言は、将来の安心につながる大切な準備です。
「まだ早いかな」「何を書けばよいのだろう」と迷われる方も少なくありません。
遺言について不安や疑問があるときは、ひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。 お話を伺いながら、ご希望に合った進め方を一緒に整理いたします。



